御油：1988年の姫街道ガイドブック

姫街道の西の起点である。 御油周辺は見所が多いのでゆっくり時間を取りたい。御油は東海道で江戸から数えて35番目の宿場町である 。徳川家康は慶長 6 年(1601)に東海道の宿駅を整えることを命じ、ー宿に一通ずつ伝馬朱印状を下した。ところがこの朱印状には「赤坂・五井(御油) 」と二宿が併記され、36番目の赤坂と二つの宿で一の宿場の機能を果たすものとされた。このような例は他には無い。
２宿間の距離はわずか 1.6キロ。本書では赤坂宿も紹介する。天保年間の頃の流行り歌に「御油や赤坂、 吉田がなけりゃ なんのよしみに 江戸通い」 とあり、遊興できこえた宿場だった。

御油宿

名鉄の国府駅から徒歩15分、御油駅から徒歩5分。
本陣2軒、旅篭62軒、総家数 316軒、問屋場 1 ヵ所があった。
街並み 300メートル。今でも当時の面影をしのべる。

御油の松並木資料館

新御油橋北10メートル。 宿場の復元模型、古文書、民具を展示。午前10時～午後4時 月曜休館 入場無料

東林寺

室町時代創建。江戸時代には御油の中心寺院として栄えた。 墓地には宿場の飯盛り女の墓がある。

松並木

街道の両側約 600メートル。 慶長9 年、幕府の道路政策として大久保長安により植樹された。 当初 650本あったが一時は百数十本にまで減少。昭和19年に国の天然記念物に指定され、現在は約 350本。
十返舎一九が書いた弥次喜多道中の舞台にもなっている。

宮地山

街道の南に見える山で標高 3 6 2 m。昔から紅葉の名勝として知られる 。山順には持統上皇が観覧されたという聖跡碑が立つ。

赤坂宿

名電赤坂駅から徒歩10分。江戸初期、棟数 360戸。宝永 6 年(1709)の大火で 280戸が焼失。その後幕府の援助で復興。全盛時は旅篭屋、女郎置屋、茶屋だけで80余戸にものぼったという。

関川神社

境内に芭蕉の句碑「夏の月 御油よりいでて 赤坂や」がある。

夏の夜の短さを御油・赤坂間の距離の短さにたとえ、赤(あか)坂と夜明(あけ)が掛け言葉になっている。

長福寺

悲恋の伝説が伝わる寺。愛した三河の国守・大江定基が都に帰るのを悲しんで自ら命を絶った赤坂長者の女、力寿姫が化したという石と大江定基が寄進した恵心僧都作の聖観音像が伝わる。

浄泉寺

境内の大きいソテツは筋向かいにあった旅篭、清須屋から移されたものらしい。 広重の「赤坂」に描かれたソテツのモデルという。

大橋屋

江戸時代の旅篭の面影を残している。現在、資料館として公開。かつては伊左衛門・鰻屋と号した。黒光りした階段を上れば江戸時代のままの部屋が客室になっている。

高札場

町の中央で人目につきやすい場所に建てられた。 間口、高さとも各二間、奥行き一間の瓦葺きで創建は慶長年間(1595一1614)といわれる。正徳元年(1711)に掛け替えられた高札が赤坂公民館にあり、別の二枚が正法寺に所蔵されている

向称寺

正保年間(1644 – 1648)の建立。往時の赤坂宿は夜おそくまで騒がしかったため決まった時刻になるとこの寺の鐘をついて騒ぎを止めるよう合図したという。その鐘は戦時中供出して今は無い。

御油の追分

東海道から姫街道への分岐点。 常夜灯と道標がある。
姫街道は信仰の道でもあった。 古代には二見の道といわれ、万業歌人の高市黒人は「妹もわれも一つなれかも 三河なる二見の道ゆ別れかねつる」と愛する人との別れを歌っている。

芭蕉句碑「陽炎の 我が肩にたつ 紙衣かな」

追分から姫街道に入って 500mほど行くと左手に西明寺の案内碑があり、傍らに小さい句碑が立っている。 これは芭蕉の没後50年たった寛保３年(1743)に建てられた東三河地方で最古の芭蕉の句碑。

船山古墳

芭蕉句碑から東へ10mほど行くと左手に三河最大の船山古寺が見える。全長93m、高さ 7.6mの前方後円墳。前方部の一部が道路で切り取られているが、道路をはさんだ信用金庫の駐車場の隅に円筒壇輪の出土状況が見られる展示ケースがある。

三河国府跡

奈良時代には統一国家の制度が整い、地方には国が置かれ、国司を派遣して治めさせた。 三河の国の国府は今の国府駅の北にある白鳥台地に置かれた。 姫街道の南にある三河総社から建物群が発見されている。

国分寺

筋違橋から北側に見える八幡台地にある。東西南北 180mの土堀に囲まれた寺域を持ち、金堂、講堂、塔などよく邊構をとどどめている。重要文化財の鐘、現在の本堂の西50m に塔の礎石がある。

国分尼寺

国分寺の東北 350mにある。地名の忍地は尼寺から。

寺域が発掘され立派な史跡公園になっている。隣に資料館（三河天平の里資料館）がある。

八幡宮

本殿は文明 9 年(1477)建立。重要文化時となっている。