ヨーロッパの切り絵

世界中で切り絵は楽しまれている。今回はヨーロッパの様々な切り絵(「ビチナンカ」・ポーランド、アンデルセン、デンマーク、ゲーテの切り絵)を紹介する。

「ビチナンカ」・ポーランドの切り絵

 ポーランドは伝統文化、芸術として切り絵を大切にしている国である。ポーランドは18世紀末に近隣の国に分割占領されてから第1次世界大戦後の独立まで長い間異民族の支配に苦しんだ。政治的抑圧の中でポーランド人は伝統文化を守ることでそのアイデンティティを保った。切り絵はその時代に農民の室内装飾として広まった。紙を2つに折ってはさみを入れることだけで、左右対称のリズミカルな文様が生まれる。地方により、単色のものから多くの色彩を重ねたものまで様々である。モチーフは鳥、花、星、木、森、人物などで、クリスマスやイースター、村祭りの時に室内の壁や天井に貼り付けて楽しんだものである。このデザインは現在も生活の中に生きている。

アンデルセンとデンマークの切り絵

 デンマークと言えば日本人は酪農とアンデルセンの名前が出てくる。国民的詩人のアンデルセンは人魚姫の童話が有名であるが、彼は多くの童話とともにお話に出てくるようなメルヘンチックな切り絵ものこしている。愛知県の安城市は戦前、農業の近代化を進めてその共同化と多角経営に成功し、日本のデンマークと呼ばれた。それにちなんでデンパークというテーマパークが生まれたがそこでは土産品としてデンマークの切り絵作品が販売されている。写真の作品は紐につるして室内やクリスマスツリーに飾るものである

ゲーテとシルエットの切り絵

 シルエットとは人物の肖像を黒一色で影絵のように表したものである。黒一色では正面からでは顔の区別がつかないから特徴がわかる横顔が描かれる。シルエットはフランス、ブルボン王朝末期の財務大臣の名前で、王家の財政難解決のため、貴族に課税をしようとした。ちなみにこれは貴族の反対で成功せずシルエットは辞職。財政難はさらに悪化し、ルイ16世が再度強硬な貴族課税を行なおうとしたことから騒動はフランス革命を引き起こすことになる。一説にシルエットは貴族の贅沢を禁じ、当時行われていた豪華な貴族の肖像画を描かせることも禁止したので「シルエット」と呼ばれる黒一色の肖像画が生まれたという。なぜかこれが流行し、イギリスやドイツでもシルエットが流行した。ドイツの文豪ゲーテも多くのシルエットの切り絵を作っている。図はフランスの「マリー・アントワネットとルイ16世」のシルエット。もう1枚はゲーテの切り絵である。

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