その他の国々の切り絵

今回は、メキシコ、アジアを中心に各国の切り絵を紹介する。

メキシコ

お祭りの際、様々な色の薄い紙で作った切り絵を紐でつるして飾るものがある。大きさといい、飾り方といい、日本の神楽を舞う時の舞台に注連縄のようにめぐらす切り絵とそっくりである。(宮崎県の高千穂神楽、愛知県奥三河地方の花祭り、岩手県平泉毛越寺の延年などにみられる。これらは日本篇で紹介する。)絵柄の中に骸骨が多く登場するのはこの国のカトリック教の影響である。

インドネシア

東南アジアでは紙ではなく皮を使った切り絵が作られる。インドネシアのワヤンという影絵芝居に使われる人形は皮を人の形に切り抜き手足を可動するように取り付けたものである。東南アジアにはインド文化の影響が強く物語には古代インドの叙事詩ラーマーヤナなどが今も上演される。影絵芝居はインドでは今もたくさんの劇団が活動している。

タイ

女性の踊る姿の切り絵は牛の皮で作られている。タイの多くの家庭にはこのような人形の切り絵があり、この女性は幸運と幸福と繁栄をもたらすとされる。

中国

司馬遷の史記(前2世紀から1世紀)には周代に木の葉で切り絵が作られた話が載っているがこれを起源とは言えない。後漢時代に紙が発明されて、やがてそれが量産化され人々に普及するようになって初めて本当の切り絵がうまれることになる。(その歴史の細かい説明は別途述べることにする。)ポーランドと同じように安価な紙と簡単な作業でできる庶民芸術として中国でも農民の間に切り絵が広がった。広い中国では地方ごとに特色ある切り絵が生まれた。これも多彩なので詳細は別途することにして、おおざっぱに分けると北方と南方の2つの特色に分けられる。北方は窓に貼る「窓花」という切り絵が多い。太い線で力強い図柄が特色。風土は乾燥地帯で冬は寒く、風砂が強いため障子の補強のためだったかもしれない。干支(えと)や身近な動物、農作業(豊作を願う)などの図が多い。正月に新しいものを貼り、年末に貼り換える。南方は温暖湿潤な気候で図柄の線は細く繊細でのびやかである。花、女性、自然風景などの図が多い。(あくまで傾向があるという話。)

日本

日本には遣唐使によって伝えられ、中国に次ぐ古い歴史がある。ただし神社にある御幣のように信仰との関係が深く、切り絵というより切り紙として民間に広がった。これも多岐にわたるのであとで紹介する。そもそも切り絵という言い方はなく1969年に滝平二郎が朝日新聞に彩色の絵画的切り絵を連載するにあたって、これは今までの紋切りや寄席芸の切り紙とは違うということで、担当記者の提案で「切り絵」という言葉が使われた。滝平二郎の作品は大好評で、これにより切り絵という呼び方が普及し、切り絵ブームが起こった。

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