古地図を読む③:山の地図「飯田・陸地測量部」明治44年改版

登山家が使う特別な地図がある。山の斜面に緑の濃淡で色付けがしてあり、尾根や谷の様子が一目でわかるようになっている。リアルな山筋は航空写真を見ているようで、しかも立体感がある。
これとは少し違うが明治時代の地図では山の斜面を刷毛目の筋の濃淡で描いて立体的に表現する技法が使われていた。科学的に言えば現在の等高線の表示方が正確なのだが地図に慣れていない人が多かった時代には直観的に山の高さや形がわかるこの方法が便利だったのだろう。等高線は正確だが理解に脳内でデジタル変換が必要でめんどうである。平地で生活する私にとってそこまで正確な情報はいらず、風景として認識すればいいので、今でもこの形式の地図があれば欲しい。ただ山の高さの表示がないのが残念だ。当時の測量部に情報が無かったわけではないだろうから、高さは軍事機密で載せなかったのだろうか。その後、地図はすべて等高線表示に変わるが、登山家にとって山のアナログ的視野は捨てがたい魅力なのだろう、登山地図には等高線とアナログ的山襞の表現が併用されている。

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